風 ノ旅人

発売を心待ちにして いたソフト、風ノ旅ビトをプレイ。
1200円(前作のフラアリーを持っていれば1000円)という格安DL専用ソフトなのだが、
これが近年稀にみる心に沁みる名作だった。

作品が持つコンセプトの性質上、
わずかなネタバレも実プレイ時の感動の一鱗一鱗を削ぎ落としてしまいかねないので
↓以下ネタバレ注意。











僕の他にも誰かいると気が付いたのは、始めてからしばらくたってからだった。
橋をかける場面でやけにかっこよく高台の上に立っているので最初はNPCかと思っていたが、挙動が妙だ。
しばらく一緒に進んで確信する。これは人間だ。他のプレイヤーだ。
この作品はマルチプレイゲームだったのだ。


ごく自然に、他プレイヤーと緩やかに繋がるゲームシステム。
仕様としてはダークソウルに似ている。
プレイヤー間のコミュニケーション手段を極限まで削ぎ落とした、優しさで出来たダークソウル。
基本的な肯定・否定の意すら伝えるのがままならない。だが、目的は二人とも同じ。
孤独を覚悟した旅に同行者がいた、それだけでも嬉しい。

相手のことを考えて、相手の意図を読もうと努力する。
そしてやがて徐々に伝わってくるのだ。相手の動きから僕に対しての僕と同じ想いが。
所詮は類推である。明確さを排除したシステム上、自らが察する主観的心情以外信じられるものがない。
しかしそれでもなお、辛苦を共に乗り越えるうちにそれは確信となる。
「僕は、優しくされている」のだと。

極限まで削ぎ落としたがゆえに普遍となり、大多数の共感を得るであろう旅(人生)のシミュレーション。
それがこのゲームである。

普通のオンラインゲームは一緒に遊んだ人間の履歴が残るのだが、実はこのゲームにはそれがない。
優しくされても、あるいは邪険にされても、後からプレイヤー同士が連絡を取り合う手段が(ほぼ)無い。
人間には本質的にインプットされた感情をそのまま同じ相手にアウトプットしたい欲求があるが、
このゲームは明確な出力先を表示しない事で、プレイによって生じる正の感情
あるいは負の感情を円環の内に閉じ込めないようにしている。かなり意図的に。

先にも言ったがこのゲームは旅(人生)のシミュレーションである。
旅の良し悪しは一期一会で相対した二人のプレイヤーによって決められる。
一周目で優しくされれば二周目で他の誰かに優しくする(逆もまた然りであるが、
それを緩和する非常によく出来たレベルデザインもこのゲームの美点の一つである)

そうやってやがてはゲームという円環からすらも解き放たれ、溢れる想いを世界に問おうという
明確な製作者の揺るがぬコンセプトに、僕は惜しみない賞賛を送りたい。


フラアリーを「ああ、いいな」と思える人なら、ぜひプレイするべきゲームである。
(僕は最高であったが)運も多分にある。良き旅を願ってやまない。


作品の評価は作品それ自体の力量はもちろんだが、それに触れた タイミングにも左右される。
これがあるから発売日即買いはやめられない。




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